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2026年3月31日

2026年から2027年のケアマネジャーの未来予想図


2026年から2027年のケアマネジャーの未来予想図

1.介護支援パッケージ補助金とデータ連携の波

これまで、処遇改善の仕組みは介護職員を中心に組み立てられており、ケアマネジャーはその対象から外れた。しかし、深刻な人材不足を背景に、今回の介護支援パッケージ補助金では、ついに居宅介護支援事業所も支給対象として追加されるという歴史的な一歩を踏み出した。この補助金は、ケアマネジャー1人あたり月額1万円相当の金額を受け取ることができる仕組みとなっている。この補助金を受け取るための最も強力な要件が、「ケアプランデータ連携システム」へ加入すること、あるいは加入の予定を立てることである。これまでこのシステムは、利用料金がかかることや相手先の導入が必要なことから普及が低迷していた。しかし、導入すれば毎月数日かかっていたサービス提供票の手入力作業が半日で終わるようになり、業務負担は劇的に軽減される。これを機に担当事業所も一斉に導入に踏み切ることが予想されるため、データ連携の波に乗り遅れないよう対応を進めることが求められている。

次※「ケアぽす」は、本要件の対象外です。対象となるのは、「国保中央会のケアプランデータ連携システム」又は、「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有するシステム」となります。

2.令和8年度処遇改善加算への移行と新たな要件

補助金の期間が終了する令和8年6月からは、新しい仕組みの処遇改善加算へと制度が完全に移行する。ここでも引き続き居宅介護支援事業所は算定対象として残り、加算率は2.1パーセントと設定されている。新しい加算制度に移行するにあたり、居宅介護支援事業所はいくつかの重要な要件を新たにクリアしなければならない。第一に、受け取った加算総額の半分以上を基本給や毎月支払われる手当として支給する月額賃金改善要件が厳格に適用される。一時金だけで全額を還元することは許されなくなるため、就業規則等を見直し、毎月の給与明細に確実にお金が反映される安全な仕組みを作らなければならない。第二に、ケアマネジャーのキャリアパス要件を満たすことである。初級から主任といった明確な階層を作り、それぞれの段階に応じた給与の目安を定めることが求められる。さらに、年1回以上の個別面談や資格取得支援などの研修体制を整える必要がある。小規模事業所にとっては初めての経験で戸惑うかもしれないが、令和8年度中に要件を満たすことを誓約すれば、特例として6月から先行して算定することが認められている。

3.1人ケアマネ法人の落とし穴と税務上の課題

ここで、居宅介護支援事業所ならではの特有の問題について触れておく。それは、ケアマネジャーが1人で法人を設立し、事業所を運営しているケースである。法人を設立して事業を行う場合、ケアマネジャー自身は法人の代表者である役員という扱いになる。法人税法の規定により、役員報酬は原則として期中で増額したり変更したりすることができない仕組みになっている。そのため、今回の補助金や加算を受け取って自身に支給しようとした場合、毎月の役員報酬を引き上げることができず、役員賞与として支給せざるを得なくなる。役員賞与として支給した金額は会社の経費として計上できないため、受け取った加算額がそのまま法人の利益とみなされ、法人税の課税対象となってしまうという問題が発生する。個人として税金や社会保険料を支払い、法人としても税金を負担することになるため、手元に残る金額が想定より少なくなってしまうという矛盾が生じるのである。1人法人で運営されている場合は、この税務上の仕組みを正しく理解し、専門家と早めに相談して最適な対応策を検討しておくことが不可欠である。

4.令和9年度介護保険制度改正とケアプランの有料化

令和9年度に予定されている介護保険制度改正において、最も衝撃的な変更が、長年議論されてきたケアプランの自己負担1割の導入である。ただし、すべての利用者が一律に対象となるわけではない。対象となるのは、新たに登録制へと移行する一部の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居者に限られる。具体的には、医療的ケアを重点的に提供している施設や、要介護3以上の重度者の割合が一定基準を超えている施設が該当する。これは、手厚いサービスを提供する介護付き有料老人ホームの入居者が実質的に費用を負担しているのに対し、住宅型施設の入居者が全額公費で賄われているのは不公平であるという国の論理から生まれた措置である。担当利用者がこの対象施設に入居している場合、ケアマネジャーは毎月利用者から1割分の自己負担額を請求し、集金する事務作業が新たに発生する。さらに、施設の生活相談員と連携して生活相談を行うことも義務付けられる。今回は一部の施設に限定された変更であるが、将来的なケアプラン全面有料化に向けた確実な第一歩となる。

5.資格制度の抜本的見直しと業務負担の軽減

資格制度についても抜本的な見直しが行われる。長年の負担となっていた5年ごとの更新講習制度が廃止されることが決定した。しかし、代わりに新たに毎年7時間程度の講習を受講することが完全に義務付けられる。毎年受講料が発生し手間もかかるため、実質的には負担増という見方もある。この講習はすべてオンラインで実施され、事前に顔を登録し、受講中は人工知能が常時監視する非常に厳格なシステムが想定されている。また、人材不足解消のため、介護福祉士等の実務経験要件が5年から3年に短縮されるなど、受験資格の大幅な緩和も予定されている。

6.変化を乗り越え選ばれるケアマネジャーへ

ここまで、ケアマネジャーを取り巻く直近の補助金や加算、そして次期制度改正の主要なポイントについて解説してきた。書類作成や新たな義務が追加され、自己負担の拡大による利用控えの懸念など、業務の複雑化と環境の激変は避けられない状況にある。しかし、国が用意した補助金や処遇改善加算を確実に取得して自身の待遇を向上させ、データ連携システムや音声入力、人工知能などのテクノロジーを積極的に活用して業務を徹底的に効率化していくことが、これからの時代を生き抜く唯一の道である。制度の荒波を前向きに捉え、浮いた時間を利用者との対話や本質的なケアマネジメントに注ぐことで、激動の時代においても地域社会から真に求められ、選ばれるケアマネジャーであり続けていただきたい。

著者プロフィール

小濱 道博 氏

小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問


昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。

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