小濱道博先生連携コラムタイトル小濱道博先生連携コラムタイトル

フェイスブックボタン ツィッターボタン Lineボタン
2023年5月25日

ケアプランデータ連携システム、仕組みの現場理解と普及の課題


ケアプランデータ連携システム、仕組みの現場理解と普及の課題

1.ケアプランデータ連携システムの現状

ケアプランデータ連携システムは、介護現場の負担軽減や職場環境の改善を図るために、厚生労働省が取り組んでいる取り組みの一つである。厚生労働省は、ケアプランデータ連携システムに関する説明会を開催しており、その様子は厚生労働省のYouTubeチャンネルでも公開されている。また、ケアプランデータ連携システムについての詳細な情報は、厚生労働省のウェブサイトでも数多く提供されている。各地域の介護支援専門員協会も厚生労働省の担当を招いての説明会を開催した。しかし、私の周りを見ても、ケアプランデータ連携システムの利用を開始したという話は殆ど聞かない。その原因のひとつが、スタートが今年(令和5年)の4月20日であったことだろう。今年のゴールデンウイークは実質的に5月7日までであった。国保連合会への昇級業務と、LIFEの4月評価分データ提供は8日から10日の実質3日間しか無かった。この新システムをスタートさせる余裕がなかったと言える。また、このシステムは居宅介護支援事業所と担当事業所の双方が導入しないと意味が無い。担当事業所の了解を得て利用を開始するためには、相当の時間を要すると考えるケアマネジャーも多いと同時に、導入を検討しているとするケアマネジャーも確実に増えてきている。

2.連携システムで浮いた時間で担当件数を増やす

ケアマネジャーは、毎月の提供票を作成して、提供表を郵送や手渡しなどの方法で担当事業所に渡している。この作業には数日を要している。連携システムを使う事で、ケアマネジャーはパソコンの画面上で提供票を作成して電子データで伝送することで、郵送などの手間が無くなる。担当事業所は、一ヶ月のサービス提供が終了すると、画面上に実績を打ち込み、担当ケアマネジャーに電子データで戻すだけで済む。ケアマネジャーは、担当事業所から届いた電子データを給付管理ソフトに落とし込むことで月初の作業が終わる。ケアプランデータ連携システムが導入されることで、提供票に関する作業が、数日単位で減少し、圧倒的に業務は簡素化される。提供表の作業で浮いた時間を、ケアマネジメントの質を上げることに要することで、結果として利用者に還元できる。また、逓減制の特例措置を活用して、ケアプラン件数を5件増やして44件まで担当することも現実的になるであろう。5件とまでは行かなくても、数件の担当件数の拡大は可能である。その場合、事業所の収益も向上し、ケアマネジャーの担当件数手当などのアップにより処遇改善に繋がる。そしてケアマネジャーの業務負担は増えない。居宅介護支援事業所にとって、ケアプランデータ連携システムはメリットでしか無いのだ。

資料1

資料|令和3年度介護報酬改定における改定事項について(PDF/P53)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000750362.pdf

3.利用料金は国保連合会のシステム利用料

その導入を躊躇させる要因として、1事業所辺り年間21,000円の利用料が掛かることが挙げられる。この料金は、1法人当たりでは無く、事業所番号毎に請求される。事業の拡大策を取る法人にとっては、負担が増していく仕組みである。しかし、圧倒的にケアマネジャーの手間が削減されることは間違いない。そのため、担当事業所とその導入についてのディスカッションを行って、しっかりと双方での導入に向けての意思統一を図ることも重要である。このシステムは、一方だけが導入していても意味が無く、導入する担当事業所が少なくても効果が薄いからである。

ところで、この1事業所辺り年間21,000円の利用料は何なのか。これは単に、電子データをやり取りするための国保連合会のシステム利用料が中心であることを知っている事業者はまだ少ないようだ。パソコン上での提供表の作成や、実績の入力、その電子データ化。電子データの給付管理ソフトの取り込みなどの作業は、居宅介護支援事業所が利用している給付管理ソフト、担当事業所が利用している請求ソフトなどで作成が可能である場合が多い。よって、それぞれのソフトで、やり取りが出来るのであれば、必ずしも国保連合会のシステムを使う必要がないという結論に行き着く。

資料2

資料|ケアプランデータ連携システムチラシVer.2(PDF)
http://www.kokuho.or.jp/system/care/careplan/lib/221125_5113_tirasi.pdf

4.国保連合会のシステムでのメリットとデメリット

ケアプランのデータを他の介護事業所と効率的に連携する方法には、ケアプランデータ連携システムを導入するか、各々が利用する介護ソフトの機能である「ケアプランのデータを共有・連携する機能」を使用することが挙げられる。 国保連合会のケアプランデータ連携システムは、ケアプランを電子データでやり取りするためのシステムであり、従来の手書きや郵送、FAXによるやりとりの代替として開発された。このシステムを利用するには、専用ウェブサイトから申請を行い、クライアントソフトをダウンロードしてインストール・設定を行う必要がある。ただし、相手先がケアプランデータ連携システムを導入していない場合は利用できない。介護ソフトの機能によるデータの共有・連携も一つの選択肢であり、その具体的な方法や手順については介護ソフトの提供元に確認する必要がある。

国保連合会のケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、電子証明書を活用することでのセキュリティ対策が第一に挙げられる。デメリットは、電子証明書を活用する関係で、1台のパソコンでしか利用出来ない点だ。介護報酬請求業務だけであれば、1台のパソコンで事足りるのであるが、データ連携システムは各部署で利用するために、著しく利便性が低い。場合にとっては、各部署間で取り合いにあることも想定される。

5.「ケアぽす」を活用する選択と利用ソフトを選ぶ必要性

たとえば、民間の「ケアぽす」という無料サービスを使う事で、国保連合会のケアプランデータ連携システムと同様の機能が活用できる。無料であるので、担当事業所を説得しやすい。また、複数台のパソコンで利用が出来るので、各部署間で取り合いとなるリスクも無い。まずは、この「ケアぽす」の活用からスタートするのも現実的と考える。

また、データ連携システムの導入にあたって想定される問題として、介護給付管理ソフトの対応状況がある。LIFEにおける介護記録ソフトの状況を見ても、ソフトのベンダーによって処理能力のバラツキが想定される。ソフト側の対応状況次第では、必ずしも業務の効率化に寄与しないケースも出てくるであろう。使用する給付管理ソフトを見極める必要がある。将来を見据えた場合は、費用対効果を考えながら、場合によっては乗り換えという選択も必要になってくるのではないか。

著者プロフィール

小濱 道博 氏

小濱介護経営事務所 代表
C-SR 一般社団法人介護経営研究会 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 顧問


昭和33年8月 札幌市生まれ。
北海学園大学卒業後、札幌市内の会計事務所に17年勤務。2000年に退職後、介護事業コンサルティングを手がけ、全国での介護事業経営セミナーの開催実績は、北海道から沖縄まで平成29年 は297件。延 30000 人以上の介護業者を動員。
全国各地の自治体の介護保険課、各協会、介護労働安定センター、 社会福祉協議会主催等での講師実績も多数。「日経ヘルスケア」「Vision と戦略」にて好評連載中。「シルバー産業新聞」「介護ビジョン」ほか介護経営専門誌などへの寄稿多数。ソリマチ「会計王・介護事業所スタイル」の監修を担当。

小濱先生の写真