一人暮らしのご高齢者の防災対策と居宅支援サービスでできること
居宅サービスを展開されている事業者様で、ご自宅でご利用者の方が災害にあったら?と考えてしまうことはないでしょうか。
とはいえ高齢のご利用者様にいつも付きっきりになっているわけにはいきません。
ご高齢者の防災としては、ケアマネジャーさんを中心に居宅サービス同士が連携をして「最低限これだけは気をつけてほしい」と思う点を注意してあげるのが理想だと思います。
では高齢者の方の防災、特に一人暮らしのご高齢者の場合には、どのような備えが必要なのでしょうか。
この記事ではお一人暮らしの高齢者の方に、普段から注意をしてほしい防災のポイントと、居宅サービス事業者として何ができるのかについてまとめてみました。
一人暮らしのご高齢者をご支援する居宅系のサービスの方にもお役に立てれば幸いです。
目次
1.高齢者の「防災」への備え
2.高齢者の防災:事業者が今できること
3.まとめ
1.高齢者の「防災」への備え
防災と一口に言ってもいろいろです。
近年は水害や地震などの自然災害が頻発しており、防災の情報や対策も大きく変わってきています。
ここでは、平成29年7月、30年7月と連続して豪雨災害で死者行方不明者を出した福岡県が作成したシニア向けの防災パンフレットを参考に考えてみます。
・地震、津波、風水害への備え
ご高齢者、特にお一人暮らしの方が普段から地震・津波への備えとして、最低限行っておくべきことは何でしょうか?
①初動対応への備え
やはり避難には、初動が大切です。
風水害の場合には、市町村が発令する避難勧告等の避難情報と気象庁等が発表する防災気象情報が、5段階の警戒レベルで提供されます。
どのような警告が出たらどう行動すれば良いのか、警告レベルの意味をまず知っておきましょう。令和3年5月にそれまで判りにくいかった避難情報が新しくなりました。
大事なポイントは、高齢者は、警戒レベル3が出たらすぐに避難するということです。

※出典:政府広報オンライン ホームページ「警戒レベル4で危険な場所から全員避難!5段階の警戒レベルを確認しましょう」より転載
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201906/2.html#secondSection
一人暮らしのご高齢者の方の場合、この警戒レベル1から5までの意味を理解しているかが、まずポイントです。
スマホを使いこなせるご高齢者の方は、普段からまた普段から災害時にどのように情報収集ができるのかを確認しておきましょう。
デジタル機器の扱いに慣れておられないご高齢者の方の避難の初動を促す取り組みとして、国土交通省が推進している「逃げなきゃコール」があります。
水害や土砂災害の危険が迫った際に、離れて暮らす高齢の家族などの避難を促すための取り組みです。
これは、平成30年7月豪雨の教訓を踏まえ、行政、市区町村からの避難情報だけでなく、身近な家族からの避難の呼びかけを促すことを目的としています。
あらかじめ専用アプリで、遠方にいる高齢者の住んでいる市区町村の防災情報をアプリで入手して、直接電話で避難を呼びかけることができます。
災害の危険が迫ると、登録した地域の災害情報がプッシュ通知されますので、遠方に暮らす家族に電話で避難を促すことができます。

※出典:国土交通省ホームページ「登録型のプッシュ型メールシステムによる高齢者避難支援 逃げなきゃコール」より転載
https://www.mlit.go.jp/river/risp/policy/33nigecall.html
国土交通省とNHK、ヤフー、KDDI、NTTドコモが協力してサービスを提供しています。
デジタル機器の扱いが苦手な高齢者でも、ご家族からの直接の電話で避難行動に移ることができます。
②家の安全対策
居宅サービスにご訪問されているご高齢者のお宅で、本棚やテレビ、家具等は地震で倒れないように対策されているでしょうか。
特に寝室やトイレ周り、台所など生活導線で、家具が倒れたり荷物が多くなったりして通路がふさがれていないでしょうか。
出入り口や通路に面した窓のガラスが、万一割れた場合に備えて飛散防止フィルムを貼っておくのも良い方法です。
照明器具は落ちないように天井に直接固定されているタイプになっているでしょうか。おしゃれな吊り下げ式は落下したり壊れたりする危険があります。
③最寄りの避難場所と避難経路の確認
ハザードマップの確認は、普段から行っておきましょう。ハザードマップは高齢者様なら住んでいる市区町村で配布されています。
ハザードマップは大まかに行って、津波、洪水、土砂災害などを想定したものと、地震、大規模な火災などを想定したものの2つがあります。
一人暮らしのご高齢者の方には、ご自分の住居がどのエリアにあって、どのようなリスクがあるのかを、まず確認していただきます。
例えば、ご自分の住居が、浸水想定区域・土砂災害警戒区域内にあると分かった場合どこに避難すれば良いのか、最寄りの避難場所をハザードマップで確認しましょう。
次に避難経路を確認します。自宅から避難所までの経路を「実際に歩いてみること」が大切です。
その際に、がけ・斜面、工場など危険物取扱施設、ブロック塀・石塀、狭い路地、ビル街のガラス窓、看板など屋外広告物等がないか、確認しながら歩きます。
防火水槽・井戸、公衆電話、公衆トイレ等の位置も確かめましょう。
④連絡方法の確認
いざ緊急時に連絡が取れるよう、家族や信頼できる友人、近所の人とどのように連絡を取るか、具体的な手順と方法を決めておくことが大切です。
普段から自分が慣れたやり方で連絡を取る方法を決めておくことです。スマートフォンが使える方は、メールやSNSを使うことができます。
スマートフォンが苦手な方は電話になりますが、電話は災害時にはつながりにくくなりますので、公衆電話になります。
災害時、公衆電話は一般回線よりも優先的に回線が確保されます。被災地では無料で利用できますが、最近は公衆電話の置いてある場所自体が少なくなっています。スマホが苦手な方は、あらかじめ公衆電話の場所を確認することも必要です。
昔から使われている連絡手段としては、伝言ダイヤル171があります。被災地以外に住んでいる親戚や知人を中継点にして連絡を取る三角連絡法というものもあります。
・火災への備え
令和4年度版消防白書によると、令和3年中の火災による死者数は1,417人で、そのうち放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者を除いた死者数は1,143人となっています。
これを年齢層別に見ると、65歳以上の高齢者が848人と74.2%を占めています。

※出典:消防庁|令和4年版 消防白書「2.火災による死者の状況」内の「第1-1-5図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)」より転載
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/chapter1/section1/para1/10103.html
これを経過別死者発生状況に見ると、実に46%が「逃げ遅れ」という結果になっています。
ではこのようなことへの対策はどのようにすれば良いでしょうか。

※出典:消防庁|令和4年版 消防白書「2.火災による死者の状況」内の「第1-1-4図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)」より転載
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/chapter1/section1/para1/10103.html
①住宅用火災警報器の設置
逃げ遅れないためには、まず火事に早く気づくことが大切です。住宅用火災警報器を必ず設置しましょう。
2004年の消防法が改正され、全国で既存の住宅についても段階的に住宅用防災機器の設置は義務化されました。2025年現在では、新築、既存の住宅問わず、すべての住宅に住宅用防災機器の設置が義務付けられています。
ただ防災機器や火災警報器は、設置から10年以上放置すると誤動作が起きることもあります。定期的に作動確認を行い、10年を目安に交換することが重要です。
②出火原因を作らない
次に出火原因になるようなものを作らないことです。高齢者で特に一人暮らしの場合、自分で気をつけているつもりでも、行き届かないこともあります。
居宅サービスのご利用者様の自宅を訪問する際に、気をつけて見ておきたいポイントは例えば次のような場所です。
- ストーブの周り:カーテンや布団、新聞紙などをストーブから1m以内に置かない。ストーブの周りに洗濯物を干していないかどうか。
- ガスコンロ:加熱防止センサーや自動消火機能がついたものを使いましょう。
- コンセントとタコ足配線:コンセントがタコ足配線になっていて埃が積もっていると、電気製品使用時に発熱し発火の原因になります。電源コードの破損も出火原因になります。
その他に、調理中に火が衣服に燃え移ったという事故も起きています。防炎性能の腕カバーや防炎エプロン等を使いましょう。
喫煙者の方への注意点ですが、布団の中で寝転がってタバコを吸う習慣は大変危険です。布団に火が落ちると一酸化炭素が発生し、命に関わります。
③初期消火
火元が小さいうちにすぐに消火できるように消火器を自宅の中に備えておきましょう。
消火器と言うと重くて持ち運びができないというイメージがありますが、最近の消火器は小型で持ち運びやすい住宅用消火器もあり、女性や高齢者でも使いやすく工夫されています。スプレータイプの「エアゾール式簡易消火具」等もあります。
高齢者世帯、特に一人暮らしの場合、こういった最近の消火器については知らない方もおられます。地域によってどこに行けば買えるかの情報をご案内するのは喜ばれると思います。
・防犯・緊急事態への備え
警察などが被害届や告訴、告発などの端緒により、犯罪が発生したことを認知した件数を刑法犯と言いますが、この件数自体は平成14年(2002年)をピークに減っています。
しかし、高齢者の被害件数の割合については、平成21年以降一貫して増加しており、令和元年中は、12.3%となっています。

※出典:警察庁|「警察白書特集高齢化の進展と警察活動」内の「図表特1-1 刑法犯認知件数及び高齢者の被害割合等(平成12~令和元年)」より転載
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r02/honbun/html/wf111000.html
特に詐欺等の知能犯について増加が目立ちます。警察白書によれば、高齢者の被害割合をみると、令和元年中は、詐欺の37.6%、殺人の28.3%、窃盗の11.1%が高齢者によるものです。
高齢者が詐欺に遭いやすい理由には、認知機能の低下、判断力の衰え、社会的孤立、ITリテラシー不足、資産保有率の高さなどが挙げられます。
こういった事情が重なって、高齢者に対する悪質な訪問販売や詐欺などが増えているのです。
詐欺、窃盗、悪質な訪問販売等の防犯上のリスクの他に、脱水症状等で緊急で倒れたりするリスクもあります。
このようなリスクに対して、高齢で一人暮らしの方はどのように備えたら良いのでしょうか。
①詐欺防止のためのコミュニケーションツール導入
迷惑電話防止機能付きの留守番電話、振り込め詐欺防止アプリ、テレビドアホンなど詐欺被害を防止するためのコミュニケーションツールを導入しましょう。
迷惑電話防止機能付きの留守番電話は、危険な電話や海外からの不審な電話について警告表示をしてくれます。
訪問販売の被害を防ぐには、知らない人をむやみに自宅に入れないことが大切です。テレビドアホンなどで相手の顔を玄関のドアを開ける前に知ることができれば、その場でお断りしたり居留守を使ったりすることができます。
振り込め詐欺防止アプリは、家族や知人の通話音声を事前に登録することで、かかってきた相手が家族本人なのか、なりすましなのかをAIが判定するアプリです。日常的にスマートフォンを使っているご高齢者の方であれば、有効な方法です。
②緊急時の自動通報サービス
いわゆるホームセキュリティサービスです。急病・ケガや体調が悪い等、緊急ボタンを押すと警備員が駆けつけてくれます。緊急ボタンを押さなくともセンサーで自動で異常を検知してくれたり、火災を感知した際はブザーが鳴り、自動で警備会社に異常を知らせるサービスもあります。
警備員が駆けつけるまでの時間や、緊急ボタンの置き場所、異常時を検知するセンサー等はサービスによって異なります。
ホームセキュリティサービスは防犯上大きなメリットがあります。
窃盗や強盗など、侵入する側も下見をして侵入しやすい家を確認しています。ホームセキュリティサービスのマークがドア等の目立つ箇所に貼られていると、窃盗や強盗などに入られる確率が減ると言われています。
③防犯カメラ・防犯フィルム
一人暮らしのご高齢者でも、マンションや集合住宅で暮らしておられる場合、防犯カメラや防犯フィルムの対策というのは、マンション全体で管理されていることが多いのでそれほど心配されることはないと思います。
しかし、一戸建てに暮らしているご高齢者の場合、防犯カメラはついているだけでも効果があります。ホームセキュリティサービスのマークと同様に、侵入する側にとって防犯カメラというのは抑止力になります。
防犯フィルムを貼ると、窓ガラスはハンマーや金属バットで何度も強打しないと破れない強度を保てます。その分、侵入に時間がかかり、泥棒が侵入を諦める可能性が高まります。フィルムを貼るだけで手軽にできる対策です。
④見守りサービス
最も大切な防災のポイントは、相談できる人を作ること、隣近所、家族とのコミュニケーションです。
高齢者の特殊詐欺や体調のちょっとした変化、何か日常で変わった出来事がなかったかなど普段からコミュニケーションを取っておけば異常に早く気がつくことができます。
しかし、一人で暮らしているご高齢者の方で、近所に家族や親しい親戚が住んでいない人も多いです。またマンションなどに住んでいてご近所とのコミュニケーションが希薄な場合もあります。
こういった時に威力を発揮するのが、見守りサービスです。
配食サービスの時に安否確認も兼ねた見守りをするようなサービスもあります。
お薦めなのは、遠方に住むご家族が、ご高齢の親の様子を見守りできるカメラ付きの見守りツールです。
遠隔地にいながら、いつでもどこでもインターネットが繋がってさえいればご高齢者の室内の様子を確認することができます。
カメラ付きの見守りサービスの良い点は、電話などに比べて、動画で見えるので相手の顔色や様子などを観察できることです。また、こちらが何かを説明する時も直接商品を見せたり地図を見せたり、図を書いて説明することができます。「言葉だけだとなかなか伝わらない」というストレスが減ります。
風水害や地震などの緊急災害が起きた時にも、見守りカメラがあればすぐにご高齢者の状況が分かります。本人につながれば、避難を促すこともできます。
価格も手頃なものが沢山出ています。一人暮らしのご高齢者の方と遠隔地のご家族との間でコミュニケーションや会話の機会を増やすために、おすすめのツールです。
2.高齢者の防災:事業者が今できること
こうやって一人暮らしの高齢者の防災対策は、やるべきことはたくさんあります。
しかし、全てを居宅介護サービスの中で引き受けることは現実的には無理があります。
基本的には、こういった防災の対策はサービス利用者ご自身でやっていただくか、またはご高齢者のご家族が対応していただくべきものです。居宅の介護サービス事業者としてはあくまでそれを助ける立場にあります。
では、居宅介護サービス事業者として何ができるのでしょうか。
・地域の情報提供
居宅の介護サービス事業者の方は、ご高齢者の方と日常的にコミュニケーションの機会を持つ方々です。一人暮らしのご高齢者の方にとっては人と話す貴重な機会です。
ですので、地域での防災活動や避難場所、詐欺被害が起きていることなど地域防災の最新情報を会話を通じて教えてあげていただきたいと思います。
ただ、印刷物を配布するだけでは、多くの場合、読んでもすぐに忘れてしまうか、紛れてしまって結局読まれないまま終わってしまいます。これではせっかくの情報提供の価値がありません。
鹿児島県の曽於市などは、高齢者向けの防災クイズを作って周知をしています。
防災をテーマにしたクイズであればデイサービスの中でもレクリエーションとして楽しむこともできます。
付き添いの散歩などで避難場所を確認するというのも一つの方法でしょう。
また家具の配置、避難動線の確保、消火器の設置、住宅用火災警報器などは居宅の事業者の方が注意をはらって、ご家族の方に連絡をして危険な箇所については対策を促すことができます。
・ご高齢者の防災グッズの買い物支援
防災グッズや室内で家具を固定する免震グッズ等についても、最近は100円ショップやホームセンターでも売っています。そういった身近な情報を知らないお一人暮らしのご高齢者も多いです。
ご利用者様の近所で、防災グッズがどこで買えるか分かる地図をお渡ししたり、リハビリを兼ねて買い物に同行するというやり方もあるかもしれません。
津波や地震等で、自宅に危険が迫ってすぐに避難という時に備えて避難袋は準備しておきたいものです。ご高齢者に特に必要なものは以下のとおりです。
- お薬類:普段使用している薬や処方薬
- 重要書類と貴重品:身分証明書、通帳、印鑑、お薬手帳、健康保険証、自宅や車の予備キー、緊急時の連絡先リスト、公衆電話の利用が必要な場合に備えて10円硬貨
- 情報収集グッズ:携帯用ラジオ、スマートフォンの充電器、老眼鏡は、普段使いのものとは別の予備のものを入れておきましょう。
- 懐中電灯、ヘッドランプ:夕暮時に避難することもあります。自宅に戻れても停電になっていることも考えられます。そんな場合に備えて懐中電灯は必須です。予備電池も準備しましょう。
- 非常食や飲料水:調理なしで食べられる栄養補給食品等。
- 折り畳み式の杖:普段から杖を使っている方。避難袋にも予備の折りたたみ杖を入れておきましょう。
- 携帯用トイレや成人用おむつ:避難所でもトイレは混雑し使いにくい環境であることもあります。トイレを我慢すると体調を崩す原因にもつながります。
- 日用品:避難所での混雑や騒音に備えてアイマスク、耳栓
地震のような大規模災害が起きても状況が落ち着いたら、避難所から自宅に戻れることもあります。そのような場合、自宅に戻れても停電になっていることも考えられます。そんな場合に備えてLEDのランプ類は必要です。
また、支援物資がすぐには届かないことも想定されます。断水や停電等もすぐに復旧するとは限りません。このような場合に備えて、携帯トイレ、カセットコンロとガスボンベ、非常用食料を最低3日分は準備しておきましょう。
その他、水がないので、トイレロールやウェットティッシュ、ゴミ袋、ポリ袋、ラップも多めに備蓄しておきましょう。
・避難行動要支援者名簿
「避難行動要支援者名簿」とは、災害時に自力で避難することが困難な人々を事前に登録しておく制度です。2013年に改正された災害対策基本法に基づいて、各市町村が作成することが義務付けられています。
要介護3から5の認定者、ひとり暮らしの高齢者、重度の障がいがある人、その他、自力での避難が困難な人は対象になります。
ただ、自動的に対象になるわけではなく、登録には申請が必要で、名簿登録された人の情報は、本人の同意を得た上で、民生委員、自治会、消防、警察などの地域の支援者に提供され、災害時の安否確認や避難支援などに役立てられる仕組みです。
この制度は、あくまで地域の助け合いによって災害時の被害を軽減することを目的としています。
しかし、「避難行動要支援者名簿」等の制度があること自体、遠方に住む家族や親戚等ではなかなかわかりません。
地域で活動する居宅介護事業者の方から、このような「避難行動要支援者名簿」が、一人暮らしのご高齢者やそのご家族に情報案内があるだけで、安心感はずいぶん違ってきます。
介護サービスの時間は限られていますが、確認可能な範囲で一人暮らしのご高齢者の自宅での危険物、避難経路の確認、地域での災害支援情報などを、遠方のご家族とつないでいただくハブになっていただければと思います。
3.まとめ
以上、一人暮らしのご高齢者の方の防災対策と、居宅介護事業の方が一人暮らしの高齢者の防災のために何ができるかについてお話してきました。
毎年のように頻繁に起きる大規模災害から学んで、地域防災の情報も年々変わっています。防災グッズやサービス等も便利なものが登場しています。
一人暮らしの高齢者にとって、最も必要なものは情報です。情報とは、いざという時のどうすべきかというシミュレーションと事前準備です。
地域の災害情報をメールで自動配信してくれる自治体もあります。こういった市区町村の独自の取り組みも日々変わっています。
こういった市区町村の独自の取り組みは、遠方に住む子供や親戚等ではなかなかわかりません。
地域で活動する居宅介護事業者の方から、防災グッズや地域の避難情報について、一人暮らしの高齢者の方やそのご家族に連絡やガイドがあるだけで、災害への備えもずいぶん違ってくると思います。
人手不足で大変だとは思いますが、居宅介護のサービスにこそ期待したい事柄です。
参考:
・御坊市HP
https://www.city.gobo.lg.jp/sosiki/syobo/tanto/kasaiyobo/1534253391642.html
・消防庁|令和4年版 消防白書
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/chapter1/section1/para1/10103.html
・警察庁|警察白書特集高齢化の進展と警察活動
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r02/honbun/html/wf111000.html
・国土交通省|登録型のプッシュ型メールシステムによる高齢者避難支援 「逃げなきゃコール」
https://www.mlit.go.jp/river/risp/policy/33nigecall.html
・政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201906/2.html#secondSection
著者プロフィール
上尾 佳子 氏
合同会社ユー・ラボ 代表
WACA上級ウェブ解析士
愛知県出身
バブル期に大手通信企業に入社し、通信システムの法人営業を経験。
1990年代、インターネット検索ビジネスを手がける新規事業部に移り、ポータルサイト運営に関わる。以後20年間一貫して、データを活用したマーケティング支援に携わる。
2011年IoTスタートアップに合流、介護福祉用具カタログをデジタル化するアプリをきっかけに介護業界について知見を深め、2014年独立。
家族の遠隔介護をきっかけに、中小企業へのデータ活用したデジタルマーケティング支援を行うかたわら、介護サービス利用者家族という視点で情報発信を行っている。現在介護関係で2つのサービスを運営中。
・介護業界向けカタログアプリ「介護のカタログ」
・介護のDX化、ICT化について考えるサイト「介護運営TalkRoom」
