ケアぽすコラム

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2023年4月24日

ケアプランデータ連携システムの現状とこれからのシステム対応


今月(令和5年4月)から厚生労働省がケアプランデータ連携システムを本格稼働するということで提供票の連携を推し進めています。

一体どんなメリットがあるのか何に気をつけたらいいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。また、どの書類までが連携するのかとお悩みの方も多いのではないかと思います。

そんな提供票の連携のお仕事を任されているご担当者の方にむけて、この記事をまとめてみました。

介護事業所側及び居宅サービス提供者側はどのようなことをすれば良いのか、令和5年4月から本格稼働が開始するケアプランデータ連携システム(提供票のデータ連携システム)に向けて介護業界でどのような動きが起きているのか、あらましが一通り理解頂けると思います。

提供票(サービス提供票)とは何かなど、現場のほうが既にご存知の部分もまとめてあります。

この部分は既に知っているというところは、読み飛ばして頂いても構いません。最後までお付き合い頂けると嬉しいです。


目次

1.提供票の基礎知識
  ・提供票とは
  ・提供票と利用票の違い
  ・提供票別表とは
  ・提供票と実績の情報の流れ

2.旧来の提供票の受け渡し方法とその課題
  ・提供票はFAXのやりとりが主流
  ・連携するソフトウェアが必須

3.ケアプランデータ連携(提供票データ連携)で課題を解決する
  ・ケアプランデータ連携(提供票データ連携)とは?
  ・提供票をデータ連携するメリット・理由

4.提供票データ連携を実現する仕組み
  ・提供票データ連携を実現するための方法
  ・介護ソフトメーカー側の提供票データ連携への対応状況
  ・ケアプランデータ連携システムの整備状況
    ①厚労省「ケアプランデータ連携システム(ケアプラン連携基盤」を利用
    ②民間の「ケアプランデータ連携システム ケアぽす」を利用

5.まとめ


1.提供票の基礎知識

・提供票とは

まず最初に、話の根本にある提供票(サービス提供票)とは何かについてお話をします。提供票は利用者の1ヶ月分の介護サービス利用予定を記載する様式です。居宅介護支援事業所のケアマネジャーと介護サービス事業所が情報共有をするために使用します。
ケアマネジャーはご利用者様の依頼を受けてケアプランを作成し、それを元に提供票を作成して、サービスの実施を事業所に依頼します。
その後、ケアマネジャーは、自分が立てたケアプラン通りに介護サービスが提供されているか、依頼したサービス事業所に介護報酬が支払われているか、また利用者様に適正に介護負担をお願いしているかということを毎月チェックします。提供票は、その算定の基礎になる書類です。

・提供票と利用票の違い

利用票は、1ヶ月分のサービスの予定を利用者の方に毎月お知らせするものです。この利用票に記載された各事業所サービス提供予定ごとに分けられた様式がサービス提供票で、サービス提供する介護事業者にサービスを依頼する際の情報共有に使用します。ケアサービス実施後、サービス提供事業所は実績を記載して、居宅介護支援事業所に提出し、提供票どおりにサービスが提供されたかをケアマネジャーはチェックし、給付管理票を作成します。

・提供票別表とは

提供票を構成するもう一つの重要なものが提供票別表になります。提供された介護サービスの点数を数値化したものです。ケアプランに記載されたご利用者様の支給限度額や負担額を管理するための書類になります。

・提供票と実績の情報の流れ

ではこのサービス提供票及び別表はどのように利用されるのでしょうか。 その情報の流れをここではご説明します。

ケアプラン、提供票の連携のやりとりに関する説明図

提供票及び別表はその翌月の計画を示すものですので、ケアマネジャーは提供票を作成し、最低でも月末までに 実際のサービスを提供するサービス事業所の方に送らなくてはなりません。(図表1内①)

一方国保連への介護保険請求の締め切りは毎月10日になっています。(図表1内②) 10日を遅れた場合請求は翌月10日になります。 国保連からの支払いは請求後2ヶ月後になりますので1回締め切りを遅れた場合、入金もさらに遅れますので施設の資金繰りに重大な影響がでます。

ここで大切なことは、居宅サービス事業所のケアマネジャーがまとめる給付管理票とその裏付けになる介護給付明細書と、介護サービス事業者が提供する介護サービス明細が一致していなければならないということです。これが一致していないと国保連に介護保険請求をしても、 数字が合わないので返戻になってしまいます。返戻になると、再修正して提出ですから、入金もさらに遅れます。

しかし、介護の現場では、利用者様の体調不良等の理由で、予定していたサービスがキャンセル、ということは頻繁に起こります。

ですから、ケアマネジャーとサービス提供事業者の間で、予定されていた提供票と、サービス提供された後の実態を合わせる必要があるのです。このため、月末が終わり、翌月初めには、介護事業所はケアマネジャーに対して実績の報告を行う必要があります。(図表1内③)

2.旧来の提供票の受け渡し方法とその課題

・提供票はFAXでのやりとりが主流

10日締めで全てのご利用者様の請求データをまとめると言う経理処理になりますが、前述のとおり、このサービスの提供票(計画)と実績を合わせるため、提供票を書いたケアマネジャーと、介護サービス事業所の間でやり取りをしなければなりません。そのやり取りは郵送・持参もありますが多くはFAXで行なわれています。

具体的には、ケアマネジャーさが作成した提供票は、多くの場合サービス事業者側には FAX で送られます。FAXされたサービス事業所は、FAXされた紙に実績を記入します。サービス事業所側は実施状況を手書きした提供票の写しを、ケアマネジャーに再びFAXで返送します。ケアマネジャー側は実績が書かれた提供票から、提供票に実績を転記し、かつ間違いがないかという提供票と実績を突き合わせたチェックを行います。その上で国保連への請求を行うという流れになります。

・連携するソフトウェアが必須

これが1対1のやり取りであればそれほど負担ではないでしょう。しかし、一人のケアマネジャー1人当たりが担当している利用者数は、35人とされています。そして、当然ですが、それぞれの利用者様に適切な、異なった内容のケアプランを組み組んでいます。

また介護事業所側も、ひとりのケアマネジャーだけとやり取りしているわけではありません。何人ものケアマネジャーに対し実績の報告を FAX しなければなりません。それにより、月末に双方に膨大な事務処理が発生しています。

私の知人のとあるケアマネジャーさんは、月末になるとFAX 送信だけで2時間はかかると苦笑いをしていました。 FAXに自動送信ボタン登録をしてあるにも関わらずです。介護保険請求の根拠になるものなので、送り先が間違ってはいけません。結局一つ一つ確認をしながら送信することになるためこれだけ時間がかかるということでした。

人口減少、人手不足が叫ばれる中では、事務作業においてはシステム化、ソフトウェアによる自動化が必要となると、この「FAX送信業務」こそ、削減するのに有効な業務なのではないかと白羽の矢が立ったということです。

3.ケアプランデータ連携(提供票データ連携)で課題を解決する

・ケアプランデータ連携(提供票データ連携)とは?

前出で述べたFAX とコピーと手書き、FAX送信の手間を解消するために、居宅介護支援事業者と介護サービス事業者間で、提供票表の予定データと実績データをシステム(及びインターネット)で連携し、双方のシステムに自動反映しようという試みです。

データ連携の対象となる書類は、
・第1表 居宅サービス計画書
・第2表 居宅サービス計画書
・利用者補足情報
・サービス利用票(第6表)
・サービス利用票別表(第7表)
・サービス提供票(予定・実績)

現在でも提供票のやりとりを支援するサービスとして、ケアマネジャーの居宅介護支援事業者側から、関係する介護事業所向けに、FAX を一斉に仕分けし自動送信するシステムはあります。しかしこのような自動送信システムは送信作業を自動化しただけで、紙(及びPDF)のデータをやりとりするだけなので、受け取ったデータを自社の介護ソフトに入力する作業は手作業のままです。FAXを受信した介護事業所側は、またそれをコピーして使い、FAXで返信してきます。

「提供票のデータ連携」というのは FAX送信を自動化するものだけのものとは明確に異なります。

二つの事業所間で予定と実績のデータをソフトウェア間で反映できますので FAX での送受信を失くし、転記ミスやチェック、確認のための残業時間を減らすことのできる仕組みです。

・提供票をデータ連携するメリット・理由

では、なぜ提供票のデータを連携する必要があるのでしょうか。そのメリットについて具体的に見てみましょう。

まず第1に生産性の向上労働時間の削減による生産性の向上が挙げられます。

厚生労働省のデータによれば提供票のデータ連携をすることによって、人件費含めると年間約81万6千円の削減効果があるとのことです。

先程、とあるケアマネジャーさんの例を挙げましたが、月末にサービス提供予定表を送信するという仕事のためだけに2時間、他にも介護事業所から戻されたサービス利用票をチェックするためだけに3時間、さらにミスを防ぐためにケアマネジャー同士で相互チェックに3時間かけているということでした。これは毎月のことです。

データ連携をすることによってこのようなFAX 送信、相互チェックの時間はすべてなくすことができます。FAX紙の使用も減り、ペーパーレス化へも一歩近づきます。

業務効率化による労働時間の削減は、介護事務だけに留まらず、職場環境の改善につながります。居宅介護事業所であれ介護事業所であれ、介護事務専門で人を雇っている余裕のある事業所は少なく、ケアを提供する人が介護事務も兼ねて行っているところが多いからです。
つまり現状、効率化できないような事務作業は、残業になるケースも多くなります。事務作業で業務効率化が可能になることは残業時間を減らすことになりますので働きやすい職場をつくることができ、職員定着率向上にも役立ちます。同時に残業時間を減らすということは人件費の削減に直結しますので、経営面から考えても望ましいことに間違いありません。

4.提供票データ連携を実現する仕組み

ここでは、サービス提供票の連携をどのようにして実現するのかというICTの仕組みについて簡単に説明したいと思います。

・提供票データ連携を実現するための方法


【これまでの提供票データ連携の取組とその課題】

これまで提供票のデータ連携は一部の介護ソフト内(同一の介護ソフトを利用する介護事業所間)だけでの機能としては実現していましたが、現実にはそれぞれの介護事業所が使う介護ソフト、システムは様々に異なるため、特定の介護ソフト内でのデータ連携だけでは、一部事業所とのやりとりを効率化することしかできず、事業所全体の提供票連携に関する業務を効率化することは出来ませんでした

【厚労省「ケアプランデータ標準仕様」策定により、実現が近づいた】

しかし、厚労省が令和元年にケアプランデータ連携の実現のため「ケアプラン標準仕様(データフォーマット)」を策定したことで「ケアプラン標準仕様」に対応した異なる介護ソフト間でも、提供票データ連携が可能となる大きな道筋ができました。

行政の推進で「競合企業の介護ソフト・システム間でのデータ連携に関わる標準仕様」が策定されたことは、介護業界の課題解決の一つとしていかに「提供票データ連携」が重要かをものがたっています。

【ケアプラン標準仕様だけでは、提供票データの受け渡しに問題がある】

ただ、ケアプランの標準仕様に合わせたデータを持つ介護事業所同士が、データ連携を行うためには「データの受け渡しに関わる課題」が存在します。

事業所スタッフが個別にメールでデータの受け渡しをするのでは、FAXでの受け渡しと同様に多大な労力がかかり、情報セキュリティーのリスクも解消されません。

そのため、業務全体の提供票データ連携を実現するには「ケアプラン標準仕様データに対応した介護ソフト、システム」と、「ケアプラン標準仕様データ」の受け渡しをシステム(インターネット)で支援する「ケアプランデータ連携システム」の活用が必要となります。

【ケアプランデータ連携システムでの「提供票データの共有」】

ケアプランデータ連携システムは、介護ソフト、システムから出力した「ケアプランデータ(提供票を含む)」をシステム(クラウドデータベース)にアップロードするだけで、関連する介護事業所に一斉共有(個別も可能)することができるシステムです。

ケアプランデータには送付したい介護事業所の情報も含まれるため、システムはその内容から「共有先の介護事業所」を自動判別し、瞬時に共有ができます。

居宅介護支援事業所からの「提供票(予定)の送付」、介護サービス提供事業所であれば「提供票(実績)の送付」が大幅に効率化されます。

【ケアプランデータ連携システムでの「提供票データの受取」】

データを受け取る事業所はシステム(クラウドデータベース)にアクセスすることで、関連事業所から共有されたデータをダウンロードすることができます。受信したデータは厚労省標準仕様データなので、「対応した介護ソフト、システム」に読込むことで入力ができ、これまで行っていた転記作業が不要になります。

介護サービス提供事業所であれば「提供票(予定)の転記」、居宅介護支援事業所では「提供票(実績)の転記」が無くなり、入力の正確性も担保されます。

【ケアプランデータ連携システムの効果】

ケアプランデータ連携システムを使うことで、FAX、メールでのデータ送信業務が不要になり、受け取ったデータの転記作業も不要になることで、大幅な業務負担を削減できます。

さらに提供票の受け渡しの際に発生していた、誤送信での情報漏洩(セキュリティーリスク)や、受け取ったデータ転記の際の誤入力(事務業務ミス)なども無くすことが出来ます。

このように介護事業所の「毎月の大幅な業務負担の軽減」「セキュリティー対策」「事務業務ミスの防止」を実現。介護サービスの運営を支援します。

・介護ソフトメーカー側のデータ(ケアプラン標準仕様)への対応状況

では日本の主要な介護ソフトメーカーの対応状況はどうなっているでしょうか。 厚生労働省の定めた「ケアプラン標準仕様」への対応は、終わっているのでしょうか?

2020年度から、ICT導入支援事業補助金の要件に、厚労省ケアプラン標準仕様への準拠が含まれるようになったことで、多くのユーザーを抱える大手の介護ソフトや中小規模の介護ソフトメーカーでの対応は軒並み行われているようです。

対応状況を確認する場合は各メーカーにそれぞれお問合せいただく事が確実です。

・ケアプランデータ連携システムの整備状況

提供票をデータ連携させるには、厚労省のケアプランデータ連携システム(ケアプラン連携基盤)か、民間のデータ連携サービスの2つの方法があります。

費用面を含め一長一短があります。

①【厚労省「ケアプランデータ連携システム(ケアプラン連携基盤)」を利用】

※利用環境はパソコン(windows10以降)でご利用可能です。

今月(2023年4月)から厚生労働省が本格稼働予定で利用は有料で、1事業所(事業所番号)毎に「ライセンス料が年間21,000円(月額換算1,750円)」かかります。

また、「ケアプラン連携基盤」にアクセスするユーザーの本人確認のため、電子証明書を居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の双方で、別途準備する必要があります。

これにより、厚生労働省が指定している標準フォーマットに対応した介護ソフトで作成・出力したデータであれば、異なる介護ソフトであっても、全国どこからでも、データの送受信ができます。

②【民間のケアプランデータ連携システムを利用】

「ケアプランデータ連携システム ケアぽす」

※利用環境はパソコン(Windowsだけではなく、Mac等でも利用可能。最新のモダンWEBブラウザでの利用を推奨。GoogleChromeで動作確認をしております。)でご利用可能です。

ケアプランデータ連携システム「ケアぽす」は、株式会社グッドツリーの提供するシステムです。

サービスは昨年2022年3月にリリースされました。

サービス提供票連携の利用料は「完全無料」です。こちらは提供元の10周年記念事業で公開されたサービスで、企業の信念として業界に貢献するという視点で作られたシステムのため、完全無料で利用できます。

本人確認のための電子証明書は取得不要です。代わりにIDとパスワード発行時に、直接電話することでアクセスする利用者の本人確認を行います。

こちらは、クラウドタイプのデータ変換サービスで、厚生労働省が指定している「ケアプラン標準仕様(データフォーマット)」に対応した介護ソフトであれば、異なる介護ソフトであっても、全国どこからでも、データの送受信ができます。また、送受信の際に「短いメッセージを付け加えたり」「PDFなどの資料データの送付」もできます。

5.まとめ

提供票のデータ連携によって、今後数年の内に、月末月初の介護保険請求の様子が大きく変わってゆくのではないかと思われます。

今後、介護ソフト、システムを選ぶ際には、この厚生労働省の定めた「ケアプラン標準仕様(データフォーマット)」「ケアプラン連携システム」に対応しているかというのは大事なポイントです。

まずは、自社が利用している介護ソフト、介護システムが対応しているか、確認するところから始めてはいかがでしょうか。

本記事が、皆様の検討に少しでもお役に立てば幸いです。